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(組織再編)適格合併でも、欠損金の引継ぎを認めず!?(一般向け)

2019.11.08

 組織再編税制に規定する「適格合併の要件」を満たす案件では、被合併法人(合併で吸収される会社)の未処理欠損金を”合併法人の欠損金としての引継ぎ”が認められているにもかかわらず、国税当局が滅多に適用しない「組織再編成にかかる行為・計算の否認規定(法132条の2)」を適用したため、裁判で争われた事案に原告敗訴(国税当局の判断支持)の判決が下されました。
 組織再編税制に限らず、形式要件を満たすなら何をやっても適法と考える税理士が主導する事案で、過去には税法の求める形式要件をすべて満たしながら、同族会社の行為・計算否認規定の適用を受けるケースもあり、注意喚起が必要です。
◆ 組織再編税制の適格合併とは?
 法人税法57条2項で、適格合併が行われた場合、被合併法人の適格合併の日前7年以内に開始事業年度で未処理欠損金額があるときは、合併法人の各事業年度における欠損金として引継ぎが認められています。つまり、被合併法人の欠損金を使って合併法人の課税所得と相殺して、税負担を軽減できるワケです。
 適格合併するには、要件に合致することが必要です。
● 適格合併の日の5年前に特定資本関係が生じている場合
● 適格合併の日前5年以後に特定資本関係が生じている場合
 「共同事業を営む目的での適格合併として政令で定めるもの」でなければ、特定資本関係が生じた事業年度前7年内の欠損金は含まない(つまり、合併法人の所得から控除できない)とされる(法57条3項)。
● 特定資本関係とは?
 合併法人か被合併法人のいずれか一方が、他方の発行済み株式総数の50%超を直接・間接保有する関係など、政令で定める関係をいう。

◆ 裁判で争われた内容
 自動車用品メーカーA社は、2002年に金属加工業のB社株を2/3取得して”特定資本関係”となった後、2003年には残るB社株を取得し、100%子会社化した。”特定資本関係”5年超の要件を満たした後の2010年3月に「適格合併」し、B社と”特定資本関係”ができた後に生じた欠損金を引き継いだ。
 法57条2項の形式要件に照らせば、適格合併として特に問題はないようですが・・・
● 国税当局の主張
 B社の未処理欠損金額を合併法人のA社の損金に算入すると、A社の法人税負担を不当に減少させるため、包括的な租税回避を防止する「組織再編に係る行為・計算の否認規定(法132条の2)」を適用して、更正処分を行いました。
● 裁判の主な争点
 裁判での主な争点は、つぎの2点です。
特定資本関係
 適格合併の事業年度開始日の5年前より以前に特定資本関係が生じている場合、法132条の2の適用が可能か?
・法132条の2適用の可否
 この適格合併は、法132条の2「法人税負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」にあたるか
● 納税者の主張
 納税者(A社)は、特定資本関係5年を充足した適格合併を行っており、つぎのように主張しています。
・法57条の2の形式要件充足の可否で、課税上の問題に対処を想定
 組織再編成での租税回避行為としての否認要件などは、法57条3項等(個別的否認規定)で書き尽くされ、形式要件の判断で課税上の問題に対処することが立法時に想定されていた。この規定の例外要件を充足する事案に同条適用は想定されていなかった。
・法132条の2適用可とする法解釈は立法趣旨に反するなど
 一般的否認規定の法132条の2(組織再編成での行為・計算否認規定)を適用し、未処理欠損金の引継ぎの否認を可能とする法解釈は、(中略)立法趣旨に反する。また、課税要件が法令で明確に定められることを要請する租税法律主義にも反する。
● 裁判所の判断
 裁判所は、法132条の2適用の可否について、つぎのように整理しています。
・同法は、組織再編成での租税回避を包括的な防止規定として設けられたと解される。
・法57条3項の適用が排除される適格合併でも、その規定が一般的否認規定の適用を排除すると解されない限り、法人税負担を不当減少させる結果となると認められる行為・計算が行われたと認められる場合は、同法132条の2の適用を予定していると解される。
・法57条3項はグループ外法人の未処理欠損金を利用した租税回避行為の防止規定で、適格合併でも、法人税負担を不当に減少させるケースが想定されないとは言い難い。特定資本関係5年超の組織再編で一般的否認規定の適用が排除されているとはいえない。

 裁判所は、つぎの点に着目して納税者の主張を退け、国税当局の判断を支持しました。
☆ A社はB社を合併後、新B社を設立しB社従業員を転籍させたこと
☆ 棚卸資産の譲渡などを行い、B社を清算して事実上未処理欠損金だけを引き継いだこと

 これら2点により、「形式的には適格合併要件を満たすが、組織再編税制が通常想定する移転資産等の支配の継続(=事業の継続)の実質が備えられていない。適格合併で通常想定されない手順や方法によるもので、実態とかい離した形式を作り出す不自然なもの」と認定しました。
 一方、納税者(A社)は「適格合併での未処理欠損金引継ぎに際して、合併したB社に従業員引き継ぎ用件や事業継続用件が求められていないのに、それを充足していないとの判断を下した」点につき不服ありとして控訴しています。

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