自社株評価の持株会社スキーム、通達を逆手にとれば”否認”も |
2015年の相続税課税ベースの拡大(基礎控除の縮小など)を契機に、相続税の節税策に注目が。タワーマンション節税については国税当局も注意喚起をしていましたが、このような行き過ぎた節税策とみられるものについては財産評価通達6項(国税庁長官による評価)の適用を適用する動きの余地もあり、特に、事業承継対策としての「持株会社スキーム」などについて、国税庁は28事務年度で評価方法に疑義のある事案について”同6項の適用”を含めた上での検討を十分するよう指示を行っています。
出典は、税務通信3432号(2016年11月7日号)より。
◆ 自社株対策とされる持株会社スキーム
自社株の評価額を抑える方法として使われるのが、”持株会社の設立と本体事業会社株式の保有”です。
● 持株会社設立のねらい
オーナー社長が業績好調な事業会社の株式を直接保有していれば、高額な自社株評価となり、そのまま相続を迎えれば相続人は相続税納税資金負担に四苦八苦することになりかねません。
こうした状態を回避するため、(最も単純なケースでは)社長が持株会社P社を設立し、P社が事業会社株を保有する形とすれば、社長の相続時の財産はP社株となる。つまり、事業会社の株式を”持株会社”を挟むことで間接保有とし、「事業会社の株式を相続の対象から外す」ことができるわけです。
● 類似業種比準価額方式で自社株評価を抑える!
事業会社株評価に際して、類似業種比準価額方式による評価を多く反映できるなら、ひと株あたりの「配当(1/5)、利益(3/5)、純資産(1/5)」のうち、配当と利益を抑えられれば、最大評価に反映される部分は純資産の1/5のみで済むこととなり、評価額も少額に抑えられるわけです。
● ”株特”に注意!
問題は持株会社に有価証券以外の資産も持たせて、事業会社株式評価額を総資産の50%未満にしなければならない点です。
もし50%以上となれば、通称”株特(株式保有特定会社)”に該当することとなり、原則的には「純資産価額方式」で行う必要があるため、節税メリットは大幅に薄れることに。
◆ 注目すべきは"納税者の行為など”
財産評価基本通達に基づき評価していながら、否認リスクが生じるものかとの疑念が生ずるところですが、通達通りに評価することが「著しく不適当」と認められる場合、国税庁長官による評価(同通達6項)となります。
「納税者の行為に基づく通達の形式利用での、税負担の軽減目的」があれば、その目的が租税回避的なものであるかを問うことになりそうです。
税理士としては、単純に通達を逆手にとった節税策を使っての対応は留意すべきという点です。租税回避のために、意図的に異常な自社株評価額となる状況を創出した場合には、通達の形式基準に合致して入れもそれが認められるわけではないため、専門家としてくれぐれも注意すべきなのです。