過度な相続税対策で納税者敗訴!借入による賃貸不動産取得節税策にストップ(一般向け) |
2019.09.02

タワーマンションについては、固定資産税の評価額について、一律評価ではなくす改正がありましたが、購入価格とその相続税評価額とのかい離(少なくとも60~80%)に着目して、賃貸用タワマンを借入金で購入する相続税対策が流行りました。今回の判決は、こうした相続直前対策にミズを差すもので、相続直前に相続税だけに目を向けた対策については慎重な対応が必要に!
◆ 賃貸不動産の取得状況など
被相続人は平成21年まで不動産賃貸会社の代表者で、個人として相続開始の3年5ヵ月前に、賃貸物件(甲不動産)を約8億3千万円で取得し、同2年6ヵ月前に賃貸物件(乙不動産)を約5億5千万円でそれぞれ取得した。購入代金13億8千万円は、10億円を銀行借入とし、残3億8千万円は自己資金のもよう。
◆ 相続税対策の具体的内容とその驚きの効果
上記賃貸物件の購入後、平成24年6月に相続が発生したが、下記のように借入金もあり、
さらに、「小規模宅地の特例(5割引)」を適用して、相続人は相続税をゼロ申告となった。
● 本件甲乙不動産の情報
取得価額① 相続税評価額② 評価率②/① 相続開始後の譲渡価額
・甲不動産 約8億3千万円 約2億円 24% 売却未済
・乙不動産 約5億5千万円 約1億3千万円 24% 約5億1千万円
合計 約13億8千万円 約3億3千万円
● 相続税節税効果の試算
【試算の前提】
・被相続人の財産(評価額): 8億円超(注) ・甲乙不動産取得自己資金:3億8千万円
・甲乙不動産評価額:3億3千万円 ・甲乙不動産の借入金 :10億円
(注) 甲乙不動産の購入後の被相続人の財産(推定、甲乙不動産を除く)
【節税効果】
・相続財産(純額)▲3,500万円(小規模宅地の評価減適用後)
算式:不動産取得後の財産評価額8億円+(甲乙不動産評価額3億3,000万円-小規模宅地の評価減1億
6,500万円)-借入金10億円
◆ 東京地裁の判断は、価格のかい離と甲乙不動産取得などの経緯!
東京地裁は、租税負担の実質的な公平を著しく買いすることが明らかな「特別の事情」があるとして、財産評価基本通達第6項を適用して、”鑑定評価額”を認めた。
● 甲乙不動産の特別な事情の検討
東京地裁では、甲乙不動産について特別な事情の有無を検討し、つぎの事実が判明。そこで、鑑定評価では”収益還元法による収益価格を標準に鑑定評価額”を求め、甲不動産は約7億5千万円、乙不動産は約5億2千万円とされた。
・相続税評価額と取得価額や鑑定評価額の大幅なかい離(4分の1程度)
・売買時に市場価格と比べて特別に高額・・・
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