節税目的で、借入取得の賃貸マンションの相続評価は評基通6項適用で、納税者敗訴(高裁)!(一般向け) |
2021.06.10

◆ 被相続人は、生前から相続税圧縮を検討
● 事実関係と申告内容
つぎのように、被相続人は生前(=実際は、相続直前)より銀行と本件不動産購入などによる相続税の圧縮効果などを検討していたところ、取得の3ヵ月後に相続が発生し、相続人は本件マンションについて(債務控除後で)▲10億2,239万円として、他の相続財産と併せて相続税の申告を行っていた。
★ 被相続人:父(H25年9月16日死去) ★ 相続人(=控訴人):長男、長女、二男
★ 単身者用賃貸マンション取得関連事項:
・銀行相談時期:H25年6月(肺がん発覚直後)
・取得時期 : H25年7月25日(売買契約締結)、H25年8月20日(15億円借入れ)
・取得価額 : 15億円(土地:9億円、建物:6億円)
・銀行借入金:▲15億円(借入期間:27年)
★ 相続税評価額:約4億7,761万円(通達評価額)
★ 控除すべき債務:▲15億円
● 国側の主張
これに対し、国は評基通6項を適用し、マンション評価額は「10億4,000万円(原価法と収益還元法による”鑑定評価額”)」として、相続税の更正処分等を行った。
★ 相続人評価額 : 4億7,761万円(土地:3億3,926万円、建物:1億3,835万円)
★ 国側鑑定評価額:10億4,000万円(土地:8億3,000万円、建物:2億Ⅰ,000万円)
参考までに、マンション評価額から債務を控除すると、差引▲4億6,000万円となる。
◆ 東京高裁は、一審判断を支持!
以上により、相続開始時の賃貸マンションの時価評価が許容されるかを争点となった。
つまり、評価通達に基づかない評価方法=賃貸マンションの時価の算定が許されるか否かがポイントとなった。
● 東京地裁の主な判断内容
一審では、つぎのように評価通達の定める評価方法では適正な時価を適切に算定できないなど、租税負担の実質的な公正を著しく害することが明らかである「特別の事情」があるとして、賃貸マンションの時価は評基通6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円として、更正処分等が適法と判断していた。
★ 通達評価額と鑑定評価額とに著しいかい離が生じていること
★ 相続税の負担減少を認識・期待して賃貸マンションが購入されたこと
● 東京高裁の判断
一審の判断を支持し、賃貸マンションの時価は評基通6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円と認定し、相続人の控訴を棄却した。
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◆ 税理士としての留意すべき点
本件は、敗訴した相続人が最高裁に上告と上告受理の申立てが行われており、最終確定にはなっていないものの、こうしたケースにおいては「評基通6項」が適用されるものと解すべきでしょう。
仮に、被相続人が頭がはっきりしていて相続人が賃貸マンション取得に関わっていなかったとしても、
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ここで注意したいのが、こうした極端な案件に税理士が加担する結果となるような事態は避けておきたいところです。それなりの金額の紹介料が手に入ったとしても、後日の訴訟リスクの方が…。
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