政府は、今年10月から適用される「2024年度都道府県別最低賃金の引上げ目安」を発表しました。

　昨年初めて1,000円の大台に乗った全国平均の最低賃金は、2年続けて過去最大の引上げ幅（全国一律50円）とすることが決まり、平均最低賃金は”1,054円程度”となる見通しに。

◆ 毎年10月改定の地域別最低賃金の目安を公表
　中小企業を含む企業は、「地域別（実際は、都道府県別）に定められた最低賃金（注）」の支払いを義務付けられており、これを下回っての支給は認められません。

　この地域別最低賃金は毎年10月に改定されることとされ、今年【2024年度】もすべての都道府県で１時間当たり50円の引上げを目安とすることが決まりました。おおむね５％の引上げとなるわけです。
　また政府は、2035年頃までに全国平均の最低賃金を時給1,500円に引き上げる意向なので、今年の全国平均最低賃金を1,054円とすると、11年後には42.3％もの引き上げとなります。
（注）別途、特定産業に従事する労働者を対象に定められた「特定（産業別）最低賃金」もあります。

◆ 緊急速報！具体的な地域別最低賃金をチェックしよう！
　正式な2024年度都道府県別最低賃金とその発効日は厚生労働省からの発表を待たねばなりませんが、資料提供元の英和コンサルティングが引上げ幅の目安を元に、すべての都道府県別の最低賃金の目安を添付の一覧表にまとめました。
一覧表には、地域別の最低賃金ばかりでなく、過去3年間の最低賃金の推移も掲載されており、中小企業の経営者の皆さまにはひと足早く10月以降に適用される最低賃金をご案内しています。
　これからの新規採用だけでなく、既存社員についてもこの最低賃金以上の支給を前提とせねばなりませんので、社員一人ひとりの生産性の一段の向上と販売価格への転嫁などを検討せざるを得ない状況です。

　また今回の最低賃金は、引上げ額の目安は全国一律50円で差がありません。それでも絶対額では、大都市圏と地方圏との最低賃金格差は大きく、トップの東京（1,163円）と最下位の岩手（943円）では220円と、2割程度も開いています。
● 最低賃金1,100円台乗せは３都府県！
　最低賃金のトップは東京都で1,163円、2位が神奈川県の1,162円で、3位の大阪府が1,114円と、この３都府県だけが1,100円台乗せに。
　続く4位から9位までは次のとおりで、1,000円台乗せは16都道府県となる見込みです。
　第4位　埼　玉　1,078円　　第5位　愛　知　1,077円　　第6位　千　葉　1,076円
　第7位　京　都　1,058円　　第8位　兵　庫　1,051円　　第9位　静　岡　1,034円
● 全国平均の引上げ額は過去最大の50円で、約５％アップに！
　2024年度は、全国平均で約5％アップの時間当たり50円の引上げとなることに。
　昨年最低賃金が800円台にとどまった『東北圏の３県（青森、岩手、秋田）、四国圏の３県（徳島、愛媛、高知）、そして九州圏の６県（長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄）』は揃って”943円から950円程度”と、900円台半ばに上昇する見通しです。
　また、残る地域の最低賃金はすべて900円台後半になるとみられます。

◆ 最低賃金を年収に置き換えると、約200万円にも！
　最低賃金の引上げはパートタイマーとして働く方にとっては朗報ですが、仕入コストの上昇や価格転嫁の進まない中小企業の経営者にとっては頭の痛い問題です。
● 見方を変えると、大きな負担が見えてくる！
　見方を変えてみましょう。
　仮に東京都の2024年の最低賃金（目安）でフルタイムで働いた場合の年収は195万円強に上ります。
　【計算式】1,953,840円＝1,163円×（7時間／日×20日／月）×12ヵ月
　これに通勤手当と社会保険料の会社負担分などを加えると、ざっと年収に15～20％をプラスした『225～235万円』が本当の人件費負担となります。

　パートタイマーの多くは、年収を103万円（所得税非課税範囲）や130万円（健康保険での配偶者の被扶養者の範囲）に抑える傾向があり、社会保険には加入しないのですが、それでも年収で見た場合には中小企業にとっては決して容易な引き上げではありません。
● 本業への人材の集中投下と収益性の向上がキーに！
　それでも、今年は何とか乗り越えられても、2035年までの最低賃金1,500円への引き上げに耐えられるでしょうか。もちろん、最低賃金だけの話ではなく、当然、一般社員の給与水準も最低でも同レベルでの賃上げが必要に。そうしなければ、少子化社会の中での人材確保は非常に厳しくなりそうです。

　視点を変えれば、今後の生き残こりを考えれば、確保しづらい貴重な人材を『本業に集中して、収益力を向上させる！』ことが最重要課題なのです。

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